2025.08.27
ベトナムでは、都市化や地域格差の是正を目的として、大規模な行政区画の再編が進められています。
しかし、「なんで地区再編するの?」や「ベトナムに住む外国人には影響があるの?」など、疑問や不安があることでしょう。
本記事では、改革の背景、再編の概要、目的とメリット、ベトナムで働く人や企業への影響について分かりやすく解説します。
ベトナムの行政再編は、経済発展と都市化に伴う課題に対応するために進められています。
現状の58省と5中央直轄市からなる三層構造の行政制度は、地域間の人口や産業の格差、行政機能の重複、そして地方財政の非効率性といった問題を引き起こしてきました。
これらの課題を解決するため、ベトナム政府は行政単位を再編し、より効率的で持続可能な行政体制を目指しています。
また、地域経済圏を基軸とした国家開発戦略とも連携しているので、経済成長を加速させる狙いもあります。
2025年7月1日より、ベトナム政府は現在の63省・市から、34省・市(6つの中央直轄都市+28省)の新しい体制に移行しました。
行政区再編後の34省・市をまとめた表です。
11の省・市はそのまま維持され、23の省・市が統合によって新たに設置されています。
<維持された11省・市>
No. | 省・市の名称 |
1 | Ha Noi市 |
2 | Hue市 |
3 | Lai Chau省 |
4 | Dien Bien省 |
5 | Son La省 |
6 | Lang Son省 |
7 | Quang Ninh省 |
8 | Thanh Hoa省 |
9 | Nghe An省 |
10 | Ha Tinh省 |
11 | Cao Bang省 |
<新設された23省・市>
No. | 省・市の名称 | 統合された旧省・市 |
12 | Tuyen Quang省 | Ha Giang + Tuyen Quang |
13 | Lao Cai省 | Lao Cai + Yen Bai |
14 | Thai Nguyen省 | Bac Kan + Thai Nguyen |
15 | Phu Tho省 | Vinh Phuc + Phu Tho + Hoa Binh |
16 | Bac Ninh省 | Bac Ninh + Bac Giang |
17 | Hung Yen省 | Hung Yen + Thai Binh |
18 | Hai Phong市 | Hai Phong + Hai Duong |
19 | Ninh Binh省 | Ninh Binh + Nam Dinh + Ha Nam |
20 | Quang Tri省 | Quang Tri + Quang Binh |
21 | Da Nang市 | Da Nang + Quang Nam |
22 | Quang Ngai | Quang Ngai + Kon Tum |
23 | Gia Lai省 | Gia Lai + Binh Dinh |
24 | Khanh Hoa省 | Khanh Hoa + Ninh Thuan |
25 | Lam Dong省 | Lam Dong + Dak Nong + Binh Thuan |
26 | Đak Lak省 | Đak Lak + Phu Yen |
27 | Ho Chi Minh市 | Ho Chi Minh + Binh Duong + Ba Ria-Vung Tau |
28 | Dong Nai省 | Dong Nai + Binh Phuoc |
29 | Tay Ninh省 | Tay Ninh + Long An |
30 | Can Tho市 | Can Tho + Soc Trang + Hau Giang |
31 | Vinh Long省 | Vinh Long + Ben Tre + Tra Vinh |
32 | Dong Thap省 | Dong Thap + Tien Giang |
33 | Ca Mau省 | Ca Mau + Bac Lieu |
34 | An Giang省 | An Giang + Kien Giang |
従来は「省 → 県・区 → 町・村」という3級制の仕組みでしたが、今後は省級「省・中央直轄市」と社級「坊・社・特区」の2級制に変わります。
新制度では、従来の県・区が廃止され、その機能や権限は省または社に移譲されます。
結果として、行政境界や住所表記が変更され、住民登録簿や各種公文書において新しい地名の使用が必要となっています。
また、一部の地域では既存の行政庁舎の統合や新設も行われ、物理的な行政単位の配置にも調整が入る予定です。
ベトナム地区再編の主な目的は3つです。
これらの目的が達成された場合、広域経済圏の形成と地域間の連携強化により、均衡の取れた発展が促進されていくことでしょう。
運営コストの削減や政策決定の一貫性も向上し、長期的かつ戦略的な国家発展が可能となります。
大規模な行政区画は、経済発展や投資誘致を促すだけでなく、公共サービスの品質向上や住民・企業への利便性向上も期待されています。
今回の再編は、国家全体の競争力と国民生活の向上に関わる重要な政策であり、行政だけでなく住民や企業にも影響を与えます。
行政手続きの変更などの課題がある一方、市場拡大やインフラ整備による新たなビジネスチャンスも生まれるでしょう。
外国人にとって、地区再編は滞在カードやビザ、労働許可証などの住所変更に伴う法的手続きの更新が必要です。
言葉の壁や手続きへの不慣れさから、多くの外国人は企業や大家、弁護士のサポートに頼らざるを得ず、移行期には時間やコストの増加が見込まれます。
ベトナムでの地区再編により、外資系企業はまず法的手続きの変更に直面します。
投資登録証明書 (IRC)や企業登録証明書(ERC)、外国人従業員の滞在カードなど、多くの書類の修正や更新が必要となり、これには一時的な時間とコストが発生します。
しかし、長期的に見れば、外資系企業は最も大きな恩恵を受けられるでしょう。
市場の拡大やインフラ整備、さらに明確かつ大規模な工業団地の計画が、結果として安心した投資拡大の根拠となりえます。
・ビザや在留カードは現行書類が有効だが、更新・新規発行時には新しい住所を使用する必要あり。
・IRCやERCは即時の変更は不要。住所変更や新規申請の際、新しい行政区分で記載が必要。
ベトナム人にとって、最も大きな影響は日常生活に直結する行政文書です。
例えば、戸籍簿、土地使用権証書、不動産関連書類や車両登録などで取引や手続きの際には、新しい省・市の名称に合わせて修正しないといけません。
しかし、統合後のインフラ整備や都市化による土地価格の上昇で、個人にも投資やビジネスが拡大するチャンスがあります。
ベトナム企業にとって、地区統合はチャンスと課題の両面を持っています。
短期的には、営業許可、土地契約などの書類を修正が必要で、従来の地域に特化した優遇措置がなくなるかもしれません。
新しい都市計画や地価基準によりコストが上昇し、中小企業にとっては負担となることも少なくありません。
一報、長期的には、市場規模の拡大や地域間インフラの連結、新たな経済拠点の形成により、顧客基盤や人材確保の円滑化、そして事業拡大のチャンスが拡がるでしょう。
・2025年7月1日以降、住民は既存の身分証明書、運転免許証、土地使用権証書などを無理に変更する必要はなく、有効期限まで使用可能。ただし、更新や再発行の際には新しい行政区分に基づいた住所が使用される。
・行政手続きは省内のいずれの行政サービスセンターでも申請可能となり、住民は最寄りの窓口を自由に選べる。
・医療保険の権利は維持されるため、住民は引き続き従来通り給付を受けられる。必要に応じて新しい居住地に合わせて医療機関を再登録可能。
・企業は行政区分変更のみであれば、営業登録証の変更は義務付けられていない。ただし、他の項目を変更する場合は、新しい住所への更新が推奨。更新手続きは無料で、通常所要日数は3営業日以内。
ベトナムの行政区画再編は、行政の効率化と経済発展を目指す重要な改革です。
ベトナムに住む外国人や企業にとっては住所表記や手続きに一定の注意が必要でしょう。
現状では大きな混乱は想定されず、公式情報を確認しながら対応すれば問題ありません。
安心してベトナムでビジネスに力を注ぎ、ベトナム生活を楽しめます。
最後までご覧いただきありがとうございました。