2025.10.01
日本で「チームビルディング」という言葉を聞くと、多くの方はワークショップ形式の研修や、課題解決型のアクティビティを思い浮かべるのではないでしょうか。
「チームビルディング」といえば、論理的に課題を設定し、協力して乗り越えることで組織力を高める、そんなイメージが強いと思います。
しかし、同じ「チームビルディング」という言葉でも、ベトナムの企業文化ではまったく異なる意味合いを持っています。
本記事では、ベトナム人の視点から、チームビルディング文化の背景や実際の様子、そしてベトナム人が日本人に期待していることについてご紹介します。
ベトナムの会社で「来月チームビルディングがありますよ」と聞くと、社員の多くは「わーい!旅行だ!」と喜びます。
ベトナムでのチームビルディングは「社員旅行」や「ピクニック」とほぼ同じ感覚です。
海辺のリゾートに行ったり、山へ行って一泊したり、時にはテーマパークや観光地を訪れたり、「業務改善」や「課題解決」といった堅い要素はほとんどありません。
ベトナムでは、なぜチームビルディングのような活動が大事にされているのでしょうか。
一番の目的は「仲良くなること」です。
職場では業務の話が中心で、なかなか個人的な会話はできません。
しかし、チームビルディングで一緒にアクティビティを行ったり、食事することで、普段見えない一面を知ることができます。
「あ、この人はこういうユーモアがあるんだ」とか「意外とアウトドア派なんだ」とか、小さな発見を通じて、距離がぐっと縮まります。
ベトナムでは、この「親しくなること」が結果的に仕事にもつながります。
日本では「仕事とプライベートを分ける」意識が強い一方、ベトナムでは「仲が良ければ仕事もうまくいく」という考え方が根強いです。
相手を信頼できると相談や協力もしやすくなるので、仕事もスムーズに進みます。
ベトナムにおけるチームビルディングは、単なる娯楽ではなく「仕事をやりやすくするための人間関係づくり」の役割があります。
会社の業種(インテリア関連)に合った橋の建設ゲームもありました。
ベトナムの企業で行われるチームビルディングは、専門の旅行会社やイベント会社に依頼してツアー形式で開催されるのが一般的です。
アクティビティをのプランは、開催場所や時間、参加人数などを考慮して、外部の会社がアイデアを出し、依頼した企業と相談しながら決めていきます。
例として、弊社FCVが開催したチームビルディングを紹介します。
この時は、海辺のリゾートで行われました。
3チームに分けられてウォームアップ。
旅行会社のスタッフがMCとして進行し、最初に「自由に踊ってください!」とか「できるだけおもしろいダンスを!」と呼びかけて、ウォームアップ自体がゲームになってました。
その後、MCが用意したプランに従い、「物をリレー形式で渡す」アクティビティや二人一組でお互いの頬や頭で小さなボールを押さえながら落とさないように走るなど、単純だけどチームワークが必要なアクティビティがメインです。
別の例では、FCVホーチミン支店で日帰りのチームビルディングを開催したこともありました。
「紙を破ってつなぎ合わせ、チーム名を表す絵を作る」ゲームや、「木の棒を使って橋を作り、重さに耐えられるかのテスト」、「4人が1本の棒に足を固定して一斉に歩き、ゴールまで競争する」などのアクティビティを行いました。
ゲームが終わった後は、バーベキューやテントで休憩、海やプールで泳いだりしてリラックス。
充実した一日になりました。
ベトナムのチームビルディングでは、これらのアクティビティを通して、チームワーク、コミュニケーション、リーダーシップも養われます。
ベトナムでのチームビルディングに日本人が参加するとき、ベトナム人は何を期待しているのでしょうか。
答えはとてもシンプルです。
「一緒に楽しんでほしい」
流暢な英語・ベトナム語で話す必要もなければ、派手に盛り上げ役をする必要もありません。
ゲームに笑顔で加わり、写真撮影に気軽に応じ、乾杯に軽くグラスを合わせるだけで十分です。
逆に、終始真面目な表情で「これは仕事の一環なのだから」と距離を置いてしまうと、ベトナム人は「日本人は冷たい」と感じてしまうかもしれません。
ベトナム人にとっては、上司や外国人が一緒に歌ったり踊ったりしてくれることが、強い親近感につながります。
無理に合わせる必要はありませんが、少しでも「心を開いてくれた」という姿勢を見せるだけで大きな効果があるでしょう。
ベトナムでは就職活動の面接の場面でも「御社はチームビルディングがありますか?」「社員旅行はありますか?」といった質問が出てくることもあります。
日本人からすると、「旅行の有無まで聞くの?」と少し驚かれるかもしれません。
しかし、ベトナム人にとっては決して軽い質問ではなく、会社が社員のためにどの程度福利厚生を考えているのかを測る一つの指標となっています。
例えば、年に一度の旅行を通じて社員同士が打ち解けられる会社は「人を大事にしている」とみなされますが、イベントが一切ない会社は「ただ働かせるだけの会社」といった印象を持たれることもあります。
ベトナムでは、チームビルディングを開催するかどうかも、スタッフの成果に関わる大きな指標です。
日本とベトナムでは、「チームビルディング」という言葉の中身がまったく異なります。
日本では論理と効率を重んじた研修、ベトナムでは親睦と楽しさを重んじた旅行やイベントに視点が置かれます。
どちらも目的は「チームを強くする」ことですが、そのアプローチは対照的です。
日本から来た人は、ベトナムでの体験に最初は戸惑うかもしれません。
しかし「一緒に楽しむことがベトナム式チームビルディング」と理解すれば、そこには日本では得られない貴重な経験が待っているでしょう。
日本とベトナムの異文化理解が少しでも深まればうれしいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。