2023.06.03

ベトナム人がコーヒーにコンデンスミルクを入れる理由

 

ベトナムは有数のコーヒー生産国で、独自のコーヒー文化を持っています。

皆さんのオフィスでも、必ずと言っていいほど、

毎日スタッフの誰かしらが、コーヒーを出前してもらっているのを見かけます。

 

今回は、ベトナムのコーヒーについてお話したいと思います。

 

  1. ベトナムコーヒーの歴史

ベトナムのコーヒーの起源は、植民地時代のフランス人によってもたらされました。

1857年、フランスの宣教師が、アラビカ種のコーヒー豆をベトナムに持ち込みました。

その後、中央高原の南部と南東部にコーヒーの木が植えられました。

1908年、フランス人がロブスタ種とエクセルサ種のコーヒーをベトナムへ持ち込み、

中央高原で栽培されるようになりました。

ベトナムでよく使われ、栽培されているコーヒーは、アラビカ種とロブスタ種の2種類、

9割がロブスタ種です。

当初のベトナムでは、貴族やフランスの役人、

あるいは都市の知識人だけが飲める飲み物でした。

次第に、コーヒーは人々の暮らしの中で親しまれる飲み物となりました。

 

一般的にベトナムコーヒーは、強い風味を持っています。

甘いコンデンスミルクと混ぜても、コーヒーの風味が失われません。

ベトナムコーヒーは、CNNトラベラー誌の

「世界で最もおいしいコーヒー」のひとつに選ばれてもいます。

また、ベトナムは『The Travel』誌で、

ユニークなコーヒー文化を持つ国に選ばれたこともあります。

 

  2. ベトナムコーヒー豆の輸出高世界2

あまり知られてはいませんが、

ベトナムのコーヒー豆の輸出高はブラジルに次いで世界第2位。

ベトナムは主にロブスタ種の栽培が盛んですが、

世界に流通している6~7割がベトナム産のコーヒー豆だと言われています。

ちなみに、日本が輸入しているコーヒーの海外国別を見てみても、

1位がブラジルで、2位はベトナムです。

ベトナムのコーヒー豆は日本のコーヒー豆の輸入量の20%を越えています。

 

  3. ベトナム人のコーヒーの飲み方は?

ベトナムコーヒーの特徴は大きく3つの特徴に分けます。

 

①通常より苦いロブスタ種のコーヒー豆を使う

②コンデンスミルクを使う

③ベトナムコーヒー専用コーヒーフィルター「カフェ・フィン」を使用する

 

ベトナムのコーヒーは、非常にどろっと濃厚で甘味があり、

コンデンスミルクを加えるのが一般的。

甘味のあるコンデンスミルクと苦いコーヒーと合わせると

濃厚で優しいコクのある味わいを楽しめます。

ベトナムコーヒーの伝統的な作り方は、

金属製のフィルター「Ca Phe Phin」を使って、コーヒーエキスを作る方法です。

Ca Phe Phinは、ベトナム人が最も好む飲み物とされています。

座って、コーヒーが一滴一滴とグラスに落ちていくのを待つのは、実に興味深いもの。

そこに砂糖やコンデンスミルクを加えて楽しみます。

 

 

  4. ベトナムコーヒー文化

ベトナム人にとってコーヒーは眠気覚ましの飲み物ではなく、

人とおしゃべりをしたりリラックスする日常の一部です

ベトナム人が「コーヒーに行く」と言えば、

コーヒーを楽しみにカフェに行くという意味だけでなく、

友達に会いに行く、仕事に行くなどの意味も含まれます。

 

小さなプラ椅子にちょこんと座る露店カフェは、特にベトナムの70〜80年世代にはお馴染みの光景。

 

  5. ベトナムのコーヒーの今

2000年代に入り、コーヒービジネスの形態も大きな変化を遂げました。

人々はインターネットや音楽のある店を好み、カフェの空間でくつろぐことに

お金を使うようになりました。

 近年のベトナムのコーヒー文化も、味覚と視覚の両方を楽しむ文化に

徐々に変わってきています。

人々は、お店の空間を楽しむために何時間もカフェにいますので、

空間にこだわるカフェは、一杯のコーヒーにサービス料も乗せています。

 

  6. ベトナムコーヒーの種類

皆さんにベトナムコーヒーを楽しでいただくために、

ここでは、いくつかの定番スタイルをご紹介します。

 

■ ブラックコーヒー(Cà phê đen・カフェデン)

苦味が強く、非常に濃い味。

ホットよりアイスで広く飲まれています。

 

■コンデンスミルク入りのコーヒー(Cà phê sữa・カフェスア)

ブラックコーヒーより飲みやすく、

ベトナム全土で最も飲まれているコーヒーです。

約3分の1を占めるコンデンスミルクと抽出したコーヒーに、

氷を加えて混ぜながらゆっくりと飲みます。

 

■ コンデンスミルク多めのアイスコーヒー(Bạc xỉu・バクシウ)

カフェスアでもありますが、カフェスアに比べて、ミルクの量が多く、

口当たり滑らかな甘くて暑い夏にぴったりのコーヒーです。

甘いですが、これにハマる人も多い。

カフェで、バクシウを注文すると、

店員さんは、ミルクがたくさん入っているカフェスアと理解します。

 

■ エッグコーヒー( Cà phê trứng・カフェチュン)

「たまご」と「コーヒー」の意外な組み合わせです。

ハノイ発祥の名物として、特にハノイでは冬場に楽しむ人も多いです。

牛乳が流通していなかった時代にハノイで考えられた伝統的な飲み方です。

卵黄とコンデンスミルクをとろふわに泡立てたクリームと

コーヒーの相性が抜群。でも、とっても甘いです。

 

■ ココナッツコーヒー(Cà phê dừa・カフェドュア)

飲むコーヒーというより、すくい上げるアイスクリームに近いもの。

ココナッツミルク、フレッシュミルク、

コンデンスミルクをブレンドした伝統的なドリップコーヒー。

ココナッツの風味を生かしたコーヒーは、

トロピカルな味わい、コーヒーカクテルのような楽しさ。

 

    7.ベトナム人がコーヒーにコンデンスミルクを入れる理由

ベトナムコーヒーというと、濃いめのコーヒーにコンデンスミルク

でもなぜミルクではなく、コンデンスミルクを入れるのでしょうか?

それには、歴史的な理由があります。

 

比較的最近まで、ベトナムでは牛乳の生産が盛んではありませんでした。

ベトナム人が伝統的に大量に消費するものではなかったので、

大規模な乳産業が発展してきませんでした。

 

昔は牛乳は主に輸入品で、新鮮な牛乳は割高でした。

そこで、「節約志向」の強いベトナム人は、

コンデンスミルクの缶を使うことを考えました。

コンデンスミルクは、牛乳を濃縮したものなので、

比較的安価で、暑いベトナムでも開封後ずっと保存でき、

冷蔵庫のない時代にはとてもありがたい存在でした。

だから長い間、コーヒーに入れるのはコンデンスミルクというのが

ベトナム人の唯一の選択肢でした。

 

もちろん、現在ではベトナムでも冷蔵庫を持つ人が多くなり、

フレッシュなミルクも普及していますが、

コーヒーに入れるならコンデンスミルク、

これが今でもベトナムの定番です。

 

ベトナムでお仕事されている皆さんも、

ぜひベトナムコーヒーとの新たな出会いを楽しんでくださいね。

 

お読みいただきありがとうございました。

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